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ありのみ農家１
福島市 - 2012年09月19日
福島市郊外のナシ農園「ありのみ工房・高橋果樹園」は、毎年8月下旬から12月下旬までナシの収穫や発送で超多忙期となる。扱うのは幸水、豊水、二十世紀、あきつき、南水、新高、新興、そしてラ・フランスの８品種だ。
園主の高橋富栄さんは祖父の代から続くナシ栽培農家の三代目。ナシづくりは40年のキャリアを誇る。この地で百年以上続く「萱場梨（かやばなし）」
は、明治19年に先駆者の鴫原作蔵さんが当時の笹木野村萱場で、荒れ果てた松林とカヤが生い茂る原野から手掛けた。水はけの良い土壌と福島盆地特有の高温多湿な気候と温度差が、ナシの核部分が小さく果肉も柔らかで、甘味たっぷりのナシを生む。以来、ナシづくりが定着し萱場梨はブランド品として知られるようになった。
高橋さんは歴史あるこの地で「おいしいナシを提供したい」と、手間暇を惜しまない。伝統ある福島の生産者として、糖度だけではなく歯触り、水々しさ、硬度や甘酸などのバランスを常に追求する。品質にこだわり、県内のみならず県外のお客さんにも提供し続けてきた。昨年のナシは例年になく大玉
で、糖度と酸味も絶妙な極上のナシができたが、原発事故による風評から出荷量は大幅に減少した。しかし、今年は徐々にお客さんも戻っているという。
高橋さんは購入してもらったお客に「ありのみ通信」を配布している。農作業の様子や日ごろ感じたこと、家族や友人の様子などを伝える生産者の顔がわかる情報の発信だ。
「ありのみ」はナシの別名称で、「無しの実」では縁起が悪いとして言い換えた表現。取材当時のありのみ畑は「豊水」の最盛期。たわわに実った豊水を、85歳になる父と協力しながら収穫に追われる毎日だ。
【ありのみ工房・高橋果樹園】
＜pear-net@abeam.ocn.ne.jp＞